不動産業に従事したり、不動産業で独立するために必要とされている宅地建物取引士資格。
いざ独学で勉強しようとしても、なかなか仕事と勉強を両立させることは困難です。
そこで、今回は宅建講座について解説いたします。
宅建講座といっても、通学が通信か、スクーリングの頻度やテキストの質量など各社によって様々異なりますので、どこを選べばよいのかわからない、という人も多いはず。
判断の目安になりやすい項目を提示させて頂きます。
ぜひこの機会に自分にあった宅建講座を見つけて、宅建士になるべく勉強をスタートさせましょう。
そもそも宅建って何?
宅建とは、宅地建物取引士を略したものです。
何だか聞いたことはあるけど具体的にはよくわからない、まずは宅建が何たるかを知りましょう。
宅建資格で何ができる?
宅建は不動産業で必要になる国家資格です。
不動産業では宅建業法という法律で様々なことが定められています。
宅地建物取引士は不動産業には欠かすことのできない存在です。
まず、不動産業を営む会社は、不動産業に従事する社員5人のうち必ず1人は宅地建物取引士でないといけません。
さらに、不動産取引を行うときには、契約内容を契約前に説明することが不動産仲介業者に求められています。※この契約前の説明を「重要事項説明」といいます。
重要事項説明は宅地建物取引士が行うことが必要です。
宅建資格を保有してできることはこの2点ですが、逆にいえば宅建資格なくして不動産業を営むことはできない、非常に重要な資格であることといえるでしょう。
宅建資格の難易度
宅建資格は法律系資格の登竜門ともいわれており、他の法律系資格と比較してもそこまで難易度が高いわけではありません。
しかし、初学者が合格するためには約300〜500時間の勉強時間を確保することが必要です。
1日に2時間の勉強時間が確保できているとしても約150日〜250日の換算となり、1年がかりで勉強し続ける根気強さと計画性が求められることは容易に想像できます。
なお、これは目安ですが、合格率は15%前後です。
全50問のうち35問程度を正解することが合格の目安になっています。
宅建資格は就職にも有利
不動産業に従事する社員5人のうち1人は宅建資格保有者でないといけない、という宅建業法のルールからわかるとおり、宅建資格保有者の確保は不動産業者にとって至上命題です。
宅建資格保有者がいないと、不動産業を拡大しようにも人を雇用することもできません。
そのため、宅建資格は就職にも非常に有利に働くといえるでしょう。
また、宅建資格を保有していると会社により異なりますが、毎月1万円〜3万円程度の資格手当が支給されることが一般的です。
宅建の学校や講座選びのポイント
宅建資格を取得するためには計画性と根気強さが必要です。
しかし、独学ではなかなか理解が困難であったり、やる気が継続しないことも事実でしょう。
本当に宅建資格の合格を目指すのであれば、専門の学校に通学したり、通信講座を受講するなどすることをおススメします。
しかし、宅建専門の学校や講座は多数存在しており、どのような講座を選べば良いか迷ってしまいます。
ここでは、宅建の学校や講座をどのように選べばよいか、そのポイントを解説いたします。
通学か通信か
資格の学校と聞くと、授業を対面で受けることをイメージします。
しかし、全員が定期的に授業を対面で受けることができるわけではありません。最近では、対面での授業のほか、通信で授業を受けることも可能です。
通学のメリットは、対面授業によるわかりやすさと、同じ勉強している人たちと時間を共にすることで、モチベーションが保ちやすいことといえるでしょう。
通信のメリットは、自分のスケジュールに合わせて授業を受けることができ、かつ何度も繰り返して理解できるまで同じ授業を受けることができる点です。
通学と通信を選択することができる人は、ご自身の性格やライフスタイルによって選択するのがよいでしょう。
金額
宅建の講座を受講するには当然お金がかかります。
ここでいう金額には、受講に要する費用のほか、テキストや問題集の費用、模試試験の費用などが含まれています。
各社とも講座内容やオプションによってかかる費用も異なりますので、金額は必ず事前に確認しておきましょう。
なお、宅建は受講料の最大40%まで、年間20万円を上限として国からの補助を受けることが可能です。
この制度をうまく活用してお得に受講することもできますので、一度チェックしてみてください。
補助に関する制度の詳細はこちらをご参照ください。
出典:厚生労働省 教育訓練給付制度
講座時間や回数
宅建試験合格は一朝一夕で成し遂げることはできず、計画性が求められます。
そのためには、各々の学校が提供する講座サービスの内容を理解することが必要です。
授業であれば何時間あるのか、それを何度受講する必要があるのか。
その授業や受講のスピードに自分のライフスタイルでついていくことができるのか。
通学や通信、金額という大枠だけではなく、サービスの中身と自分のスタイルが合致しているかを確認することも合格に必要な作業ということができるでしょう。
おすすめの宅建講座10選
では具体的に資格の学校が提供する宅建の講座をみていきましょう。
なお、比較しやすいように各社のサービス内容を一覧表にまとめています。
比較検討にぜひご活用ください。
なお、初学者向けのものから既学者向けのものになる順序で記載しています。
セミナー名 | 社名 | 価格 | 特徴・ポイント | 受講形式 | 開催場所 | 講座時間・回数 | 教材・テキスト |
---|---|---|---|---|---|---|---|
総合本科生 | TAC | 148,500円 | 初学者でも安心の充実カリキュラム | 通信・通学 | 全国34箇所 | 1週間に2回 | 自社オリジナル |
スーパー本科コース | 日建学院 | 280,000円 | 確実合格を目指すための万全カリキュラム | 通信・通学 | 全国47都道府県を網羅 | 1週間に1回から2回 | 自社オリジナル |
春からチャージ合格フルコース | LEC | 135,850円~ | インプットからアウトプットまでを完全網羅したカリキュラム | 通信・通学 | 全国主要都市 | 1週間に1回 | 自社オリジナル |
宅建士合格コース・入門パック | 資格の大原 | 174,100円 | 充実したカリキュラムと細分化されたテキストが魅力 | 通信・通学 | 全国主要都市 | 1週間に2回 | 自社オリジナル |
バリューセット3 | フォーサイト | 69,800円~ | 応用知識までを網羅 独学での合格を目指す既学者におすすめ | 通信 | 授業なし | 自分のペース | 自社オリジナル |
速習本科生 | TAC | 121,000円~ | 短期間で学習することができ、試験前の答練も充実のカリキュラム | 通信・通学 | 全国34箇所 | 1週間に2回 | 自社オリジナル |
再チャレンジ合格ベーシックコース | LEC | 126,500円~ | 再チャレンジする方に向けた専用カリキュラム | 通信・通学 | 全国主要都市 | 1週間に1回 | 自社オリジナル |
水野健の過去問30年とことん解説講座 | LEC | 26,950円~ | 厳選過去問の解法と解説に特化したカリキュラム | 通信 | 授業なし | 自分のペースで | 自社オリジナル |
全国統一公開模擬試験(教室実施) | 日建学院 | 5,000円 | 本番環境での模擬試験 | 通学 | 全国47都道府県を網羅 | 1回のみ | 自社オリジナル |
法改正「重要」論点講義 | TAC | 4,400円 | 法改正に特化した講義 | 通信 | 授業なし | 1回のみ | 自社オリジナル |
【初学者】①TAC 総合本科生
どのように勉強をしていけば良いかわからない。
勉強のペースを継続させるだけの余裕がない。
そういった初学者の悩みを全て解決してくれるのが、このコースになります。
おススメのポイントは1週間に2回の受講ペースであるため、余裕を持って学習を進めることができるところです。
さらに、本番環境さながらの模擬試験はもちろんのこと、本試験直前の答案作成対策までを網羅したフルパッケージになっています。
迷ったらこのコースを受講しておけば間違いないでしょう。
【初学者】②日建学院 スーパー本科コース
少しゆっくりしたペースであっても確実に合格を目指していきたい。
そんな人に最もおススメのコースです。
通常コースでも合格率に定評のある同社が提供するこのプレミアムコースは少々高額であることがネックです。
しかし、通常の講座に加えて、民法の入門編や主要科目のアプローチ授業を行うことで、初学者のつまづきを徹底して排除しています。
せっかく宅建の学校に入学しても、授業についていくことができず、結果的に勉強をしなくなる。
このコース内容であれば、お値段を支払う価値は十分にあるでしょう。
直前対策と直前模擬試験も、もちろん解説付きと至れり尽くせりの内容です。
【初学者】③LEC 春からチャージ合格フルコース
全63回の講義が開催されますが、インプットが35回、アウトプット15回、模擬試験14回とこちらも非常にバランスよく充実した内容になっています。
導入講義などはありませんが、この講座の授業自体が言葉アレルギーなどに配慮して構成されているため、初学者でも継続して授業に参加することができるでしょう。
さらに、インプットは対面授業もしくは通信講座を選択することができますが、アウトプット以降はWEBでの参加になります。
直前期に焦燥することで不要な知識を吸収してしまったりすることが初学者ではよくあります。
自分のペースでアウトプット作業と復習作業を進めることができるこのペース配分は魅力ではないでしょうか。
【初学者】④資格の大原 宅建士合格コース・入門パック
こちらも初心者向けに導入講習プランが盛り込まれたコースです。
インプットとアウトプットのバランスの良さもさることながら、細分化されたテキストの充実がこのコースの最大のポイントではないでしょうか。
2回分の模試試験が含まれたそのテキストと問題集は全部で10種類・28冊におよびます。
問題集が持ち運びに適したA5サイズであったり、基礎演習テキストが〇×形式であったりと、学習する人のスタイルや学習の習熟度に合わせて選択できるようになっています。
自分のライフスタイルとレベルに合わせて勉強できるのはうれしいですね。
【既学者】⑤フォーサイト バリューセット3
過去に宅建の勉強をしたことのある方や、宅建資格はないけど実務をバリバリこなしている、そういった人におすすめのコースです。
ゼロから基礎を固めるのではなく、あやふやな知識を確実に穴埋めしていくことに重きを置かれている方々はぜひともご検討ください。
また、基本的にDVDと問題集を利用した学習方法ですので、自分のペースとスケジュールに合わせて学習することが可能です。
仕事が不定期に入る方なども、安心して申し込めるのではないでしょうか。
最もおススメのポイントはオリジナルの「過去問一問一答演習」システムです。
宅建試験は4つの選択肢から正解の選択肢を選ぶ四者択一のマークシート方式で行われます。
他の選択肢に惑わされることなく正しい解答を導き出す能力が培われますので、過去の宅建試験であと数点で悔しい思いをされた方には即効性もあると考えられます。
【既学者】⑥TAC 速修本科生
こちらもインプットとアウトプットをコンパクトにまとめながらも、内容や品質は申し分のないコースです。
いわば、短期集中型で宅建試験勉強を行いたい方にはもってこいのコースであるといえるでしょう。
カリキュラムは全38回とコンパクトになっていますが、内容は初学者向けコースにひけをとりません。
なお、短期集中型だとアウトプットが不十分になるのではないかと疑問を持たれるかもしれません。
しかし、基礎講義の中で全26回のミニテストがありますので、単元ごとに振り返りをしながら進めることができるでしょう。
【既学者】⑦LEC 再チャレンジ合格ベーシックコース
残念ながら前回不合格だった方向けの再学習コースです。
全48回の講座のうち21回がアウトプットに特化している、いわば既学者と不合格者のためのコースということができます。
このコースでは基礎講座は行われません。
ハイレベル合格講座と呼ばれる知識の増量と穴埋めを主体としたインプット講座を行った後に、アウトプットを徹底的に行います。
基礎的なことは理解しているが、少しひねった問題やマイナー論点を出されると落としてしまう。
そういった方が合格に向けて再チャレンジするにはもってこいの講座となっています。
【答練】⑧LEC 水野健の過去問30年とことん解説講座
このコースは過去問の解法と解説に特化した通信カリキュラムです。
宅建試験特有のひっかけ問題や難解な選択肢の見分け方など、基礎知識のインプットはもちろんのことですが、本番で使用された過去問から良問を選りすぐった高密度な答練は合格への近道になるでしょう。
あと2〜3点で合格ラインという方の最後の後押しが必要というときに、このような答練に特化したカリキュラムは非常に役立ちます。
試験本番1〜2ヶ月前のアウトプット完成期にぜひご検討ください。
【模擬試験】⑨日建学院 全国統一公開模擬試験(教室実施)
直前期になると何をしてよいかわからなくなることがあります。
そのなかで絶対にやってほしいことが、模擬試験を受けることです。
この全国統一公開模擬試験は通信対応もしていますので、自宅での受験も可能です。
しかし、あえて本番環境で受講することをおススメします。
いきなり本試験に臨むよりも、同じような環境を経験しておくメリットは計り知れません。
また、この全国統一公開模擬試験の良いところは問題ごとの正答率がわかることです。
落として良い問題と落としてはいけない問題が一目瞭然であるため、知識の漏れや粒度を相対的に測る良い機会といえるでしょう。
【番外編】⑩TAC 法改正「重要」論点講義
宅建試験にはある特徴があります。
その特徴とは「法改正があった箇所が出題される傾向にある」ことです。
この特徴を逆手にとったカリキュラムがこの法改正「重要」論点講義になります。
本項をお読みの方には、去年のテキストを使っているような人はいらっしゃらないと思いますが、テキストは常に最新年度のものを準備する必要があります。
その上で、ピンポイントで出題される可能性が高い法改正された論点の解説講義を聞くことで、確実に加点を積み重ねることができるようになるでしょう。
宅建講座選びの注意点
宅建講座は自分に合う学習方法か、内容は本当に自分が知りたいものかをきちんと調べておくのが大切です。
自分と合っていない学習方法だったり、講座の内容が思っているものと違った場合、お金も無駄になってしまいます。
何度も分けて徐々に学んでいくものだったり、短期間でコミットする講座だったりとさまざまなものがあるのでしっかり自分に合っているか確認しましょう。
宅建講座のメリット・デメリット
宅建講座を受けるメリット・デメリットはこちらです。
メリット
- 宅建の資格が取得できる
- 宅地建物取引士の仕事ができる
- 就職で役立つ
- 転職の幅も広がる
デメリット
- 時間がかかる講座が多い
- 講座とともに独学する根気がないと合格が難しい
宅建講座の口コミ
今回ご紹介した宅建講座を提供している各社の口コミはどのようなものでしょうか。
実際に受講した方の声を聞いてみましょう。
TAC
大手であり実績もあるTAC社の口コミは以下のようなものでした。
【良い口コミ】
- 大手なので安心できる
- 講座が多数準備されている
- 自習室の利用や通信講座でも質問機会があるなど、サポートが手厚い
【悪い口コミ】
- 高品質であるが故に、料金が高い
良いサービスを受けようとすると、やはり料金が高額になります。
コストパフォーマンスを重視される方には向かないかもしれませんが、高密度のサービスを受けたい方にはおススメ、といえそうです。
LEC
法律系資格に定評のあるLEC社の口コミは以下のようなものでした。
【良い口コミ】
- 大手ならではの安心感がある
- 模擬試験などで予想問題の的中率が高い
【悪い口コミ】
- 大手ならでは、料金が高い
こちらも大手ならではの料金の高さが気になる方がいらっしゃるようです。
しかし、予想問題の的中率の高さなど、メリットも多数あります。
日建学院
建築関連資格で名高い日建学院社の口コミは以下のようなものでした。
【良い口コミ】
- 通信教材がわかりやすく作成されている
- サポート体制の充実
【悪い口コミ】
- テキストが充実しすぎており、負担増がみられる
合格率の高さも同社のメリットですが、網羅性がありすぎるところがデメリットのようです。
資格の大原
簿記や経理系が強い資格の大原社の口コミは以下のようなものでした。
【良い口コミ】
- 他社と比較して安価で受講できる
- 対面授業が非常にわかりやすい
【悪い口コミ】
- 通信講座に限ればテキストや映像教材が弱い
宅建は専門外という印象は否めませんが、コストパフォーマンスを重視する方にはマッチするのではないでしょうか。
フォーサイト
映像教材に定評があるフォーサイト社の口コミは以下のようなものでした。
【良い口コミ】
- eラーニングManaBunがとりあえず秀逸
- ゲーム感覚でテストに取り組めるので、時間を忘れて勉強することができた
【悪い口コミ】
- 昨今の宅建試験が難化しているため、フォーサイトのテキストだけでは厳しい
- 解説があっさりしすぎているところがある
初学者がアレルギーなく進めるにはよい講座とシステムを持ち合わせているようですね。
一方で、高得点を目指す受験生からは物足りない声もあります。
宅建講座を活用して宅建試験に合格しよう
宅建試験を独学で合格することは非常に困難ですので、各学校が提供する講座を受講することで最短距離で合格することが可能になります。
重要なことは、自分の学習進捗度やライフスタイルに合わせた講座を選択することだと著者は考えます。
本項が参考となり、宅建試験に合格されることを心よりお祈り申し上げます。