近年、ChatGPTやGeminiは飛躍的進化を遂げ、国内でも独自開発に着手する動きが活発化しています。しかし、生成AIはメリットと同時に、いくつかの問題点も抱えています。
この記事では、そんな生成AIの問題点を、Wikipediaや学術論文、最新ニュースから徹底調査しました。生成AIを活用するすべての方はぜひご一読ください。
生成AIが抱える5つの問題点とデメリット
では、生成AIが抱えている具体的な問題点を見ていきましょう。ここでは、主な5つの問題点とデメリットに着目して解説していきます。
- 著作権侵害
- セキュリティリスク
- オリジナリティの欠如
- 誤情報の生成
- 検索市場の変化
①著作権侵害
生成AIが抱える大きな問題点の一つが「著作権侵害」です。生成AIの著作権侵害は、その利用段階ごとに異なる問題点やデメリットを抱えています。
1.「学習」の段階での問題点
生成AIは、大量のテキストや画像を読み込んで学習しますが、これには著作権のある作品も含まれています。
日本の著作権法30条の4では、生成AIに著作物を学習させることは原則として認められていますが、「著作権者の利益を不当に害する場合」は許されません。しかし、この許容範囲の線引きは、現在のところ明確に定義されていないという問題点があります。
参照:WIKIBOOKS
2.「生成」の段階での問題点
生成AIに入力する指示文(プロンプト)の内容によって、生成コンテンツに対する著作権の有無が変わってきます。例えば、ワンクリックで生成した画像には、通常著作権は発生しません。
しかし、指示文に意図や創意工夫がある場合、「人間の創造性が関与」するため著作権が発生します。ただし、この「創造性の関与」の判断基準も現時点で不明瞭であるため、これもまた、デメリットや問題点として残されています。
3.「利用する」段階での問題点
生成AIの作品を利用する段階になると、「著作権侵害」という問題点が生じます。著作権侵害の判断基準は、「依拠性(元作品を参考にしたか)」と「類似性(どれだけ似ているか)」の2つの指標が用いられます。
例えば、猫のイラスト風画像を生成し、この画像を見た多くの方が「ハローキティを想起」するとしましょう。この場合、該当画像を商用利用すれば著作権侵害になります。
しかし、これらの判断基準を個々の事例に適用するのは難しく、世界中で依然として議論が続いています。以下の記事は、実際の著作権侵害で争議となった中国とアメリカの判例を紹介しているので、ぜひご参照ください。
②セキュリティリスク
生成AIが抱える問題点・デメリットの一つは、セキュリティリスクです。このセキュリティリスクは、大きく3つの問題点を孕んでいます。
1. サイバー攻撃の巧妙化
サイバー攻撃は、実は生成AIの登場で、その手口が格段に巧妙化しています。従来、フィッシング詐欺メールは、どこか不自然な日本語や違和感のある構成が特徴で、注意すれば見破ることができました。
しかし、生成AIの普及により、自然な詐欺メールや精巧な偽サイトが激増し、被害に遭うリスクが従来以上に高まっています。これもまた、生成AIがもたらす看過できないデメリット・問題点の一つです。
2. マルウェア作成の敷居低下
生成AIの登場で、マルウェア(悪意のあるソフトウェア)作成の敷居が大きく下がったのも、無視できない問題点です。近年増え続けているランサムウェアやトロイの木馬といったマルウェアは、システム破壊や情報窃盗など甚大な被害をもたらします。
これまで専門知識が必要だったマルウェア作りが、生成AIによって誰でも簡単にできるようになったということは、大きな問題点やデメリットといえるでしょう。
3. 意図しない情報漏洩
機密情報が意図せず外部に漏洩するリスクも、生成AIが持つ問題点です。重要な内容をAIに入力すると、それが学習データとして使われ、他のユーザーの応答に現れてしまう可能性もゼロではありません。
特に、クラウドで提供されている生成AIサービスは、入力された情報がどこに保管され、どう扱われるのかが見えにくいため、情報漏洩のデメリットがより高まることになります。
③オリジナリティの欠如
生成AIの問題点の一つは、オリジナリティの欠如です。生成AIは、一般的に「良い」とされる文章や画像を作りますが、実は情報の優先順位や信頼性を判断するのが得意ではありません。つまり、根拠ある論文より、バズった記事を参考にするデメリットも孕んでいるのです。
例えば、「川に桃が流れてくる音は?」と尋ねれば、多くのAIは「どんぶらこ」と答えるでしょう。これは膨大な過去のデータから、「もっともらしい答え」を統計的に選び出して組み合わせているからなのです。
生成AIの回答が「どこか浅い」と感じてしまうのは、まさにこの仕組みによるものです。独自の視点や深い洞察、そして人間特有の知性や感性から生まれる表現は、今もなお生成AIが克服できていない大きな問題点といえるでしょう。
④誤情報の生成
生成AIは、誤情報生成(ハルシネーション)の問題点も抱えています。生成AIの返答は自然でもっともらしいですが、これはAIが「真実」や「事実」を理解しているからではありません。
生成AIは、学習した大量のデータの中から、最もそれらしい言葉の並びを統計的に選び出し、あたかも正しいかのように記述しているに過ぎないのです。
近年、生成AIの進化により誤情報生成のリスクは少なくなりましたが、やはり生成AIの情報は100%正確ではありません。別途信頼できる情報源と照らし合わせる必要があるのは、生成AIが持つデメリットや問題点といえるでしょう。
⑤検索市場の変化
生成AIがもたらす問題点やデメリットは、ついに検索市場にまで及んでいます。Googleは検索市場で圧倒的なシェアを誇り、これまで一強体制を維持し、絶大な影響力を示してきました。しかし、生成AIの登場により、その状況に変化の兆しが見え始めています。
実際、Statcounterの2024年10月の調査では、Googleの検索トラフィックは世界シェア89.34%と、2015年以来初めて90%を下回りました。そして、現在(2025年6月2日)もそのシェア率は回復せず、89.54%と同水準にとどまっています。
この動向を受け、Googleは2025年5月20日にアメリカで、生成AIを活用した新しい検索体験「AIモード」を発表しました。時代を席巻した「ググる」という行為も、生成AIの影響下で変革を余儀なくされているのです。
参照:Statcounter
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論文で議論される生成AIの問題点
生成AIの急速な普及に伴い、学術界でもその法的・倫理的な課題が注目されています。多摩大学の論文「生成AIによる社会への影響」では、AIが生成するコンテンツが意図せず著作権を侵害する可能性があるとして、法制度の見直しの必要性が指摘されています。
- 学習段階での著作権侵害リスク
- 著作権侵害の判断基準と法整備の必要性
①学習段階での著作権侵害リスク
論文によると、生成AIは学習の過程で大量の著作物を取り込むため、既存の作品に酷似したコンテンツを生み出す場合があり、このような場合、たとえユーザーに盗用の意図がなかったとしても、結果的に著作権を侵害してしまう問題点を示唆しています。
こうした問題に関連して、論文では日本の著作権法における「権利制限規定」にも言及。私的使用の複製や公正な引用、非営利目的での利用など、一定の条件を満たせば、著作権者の許可を得ずに利用できるケースもあると紹介しています。
②著作権侵害の判断基準と法整備の必要性
文化庁の見解によれば、著作権侵害と認定されるには「類似性」「依拠性」の両方が必要です。つまり、生成AIによる出力であっても、これらの条件を満たせば法的責任を問われる可能性があると論文では警鐘を鳴らしています。
論文の結びでは、AI技術の進化に応じて、創作活動の定義や著作権制度そのものの再構築が必要な段階にあると結論づけています。文化庁も、専門家との議論を重ねながら、AI時代に対応した法制度の整備を進めていく方針を示しています。
参照:多摩大学「生成AIによる社会への影響」
Wikipediaから見る生成AIの問題点
オンライン百科事典Wikipedia「生成的人工知能」の項目では、生成AIが引き起こす社会的・倫理的問題点について、幅広く指摘しています。
- 「雇用への影響」を冒頭に掲載
- 偽情報の拡散リスクにも注目
- その他の懸念
①「雇用への影響」を冒頭に掲載
Wikipedia「生成的人工知能」のカテゴリ「課題」では、まず雇用への影響を問題点としています。生成AIの台頭により、イラストレーターや俳優、声優、アナウンサーなど、クリエイティブ職の仕事がAIに奪われる可能性が高まったとして、以下のような事例を挙げています。
- 画像生成AIによりイラストレーターが最大7割の仕事を喪失(中国)
- 生成AIに関する懸念が広がり、労働争議の一因へと発展(ハリウッド)
特に、音声を模倣できる生成AIは、声優分野において深刻な脅威として取り上げています。
②偽情報の拡散リスクにも注目
生成AIのもう一つの問題点として、偽情報の拡散リスクも取り上げています。近年、高度なディープフェイク技術が詐欺やデマ、フェイクニュースなどに悪用される事例が頻発し、このディープフェイクにより、社会全体の信頼基盤が揺らぐ危険性について言及しています。
こうした懸念を受けて、日本の声優たちが2024年、「NOMORE 無断生成AI」という団体を立ち上げ、無断で音声を生成・使用する行為に対して反対の意を表明する動画を公開したことも合わせて記述しています。
③その他の懸念
Wikipediaでは、生成AIに関する以下のような問題点も取り上げています。
- 個人情報や機密情報の漏洩リスク
- 誤情報(ハルシネーション)による混乱
- 学習データに含まれる差別・偏見の再生産
- 生成AI開発が一部の大手企業に集中することによる独占構造
- AIの学習・運用に必要なエネルギーによる環境負荷
- 低品質コンテンツの大量発生
Wikipedia「生成的人工知能」の中で、生成AIの問題点の記事は約9割を占めていました。このことからも、生成AIの問題点の広範さと注目度が伺えます。
参照:Wikipedia「生成的人工知能」
ニュースから見る生成AIの問題点
次は、2024年8月に読売新聞で掲載された生成AIと学生の課題提出に関する調査のニュースから、生成AIが抱える問題点を探ってみましょう。
- 学生たちの「安易な生成AI利用」が浮き彫りに
- 生成AIコンテンツ判別の難しさ
①学生たちの「安易な生成AI利用」が浮き彫りに
読売新聞が報じた仙台大学の研究チームの調査結果は、教育現場における生成AIの利用が抱える深刻な問題点を浮き彫りにしています。
この調査によると、高校生や大学生の約3割が、生成AIの回答をそのまま課題やレポートとして提出した経験があると回答しました。これは、学生たちが生成AIを「手軽に使える情報源」と捉え、学習内容の理解よりも、とにかく効率よく課題を終わらせることを優先している現状を示唆しています。
さらに懸念されるのは、AIの回答の真偽を確認する方法を知らない学生が6割以上もいたという点です。これは、学生たちが間違った情報をそのまま受け入れて学習してしまう、という問題点やデメリットまでも孕んでいます。
②生成AIコンテンツ判別の難しさ
教育現場の戸惑いも大きく、大学・大学院の教員の約半数が「AIが書いたのか学生が書いたのか判別できない提出物」に直面していると回答しました。また、4割以上が「AIの使用が疑われるレポート」を問題点として挙げています。
現状の生成AIコンテンツチェックツールには100%の信頼性があるものはなく、中には「結果を学生懲戒処分の根拠としないでください」と明記されたツールも存在します。
これは、生成AIの精度が向上するにつれて、その利用の是非を判断する「線引き」の難しさを如実に示した問題点といえるでしょう。
参照:読売新聞
生成AIの問題点と解決策
生成AIは、著作権やセキュリティ、誤情報といったいくつもの問題点を抱えています。ここでは、先ほど紹介した生成AIの問題点を挙げ、それぞれの解決策を表にまとめました。
問題点 | ユーザー側の解決策 | 組織・開発側の解決策 |
著作権問題 |
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セキュリティリスク |
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オリジナリティの低下 |
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誤情報生成 |
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教育現場での活用 |
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生成AI利用時は、「AIが言っているから正しい」ではなく、「AIの回答について自分はどう思うか」を考える習慣をつけましょう。試行錯誤しながら、自分軸を重視したうえで生成AIと向き合っていくと、生成AIの問題点を効果的に克服できるでしょう。
問題点を上回る生成AIのメリット
生成AIは、本記事で述べた通り、誤情報が出てしまう「ハルシネーション」、個人情報の流出、著作権侵害など、看過できない問題点が数多くありました。しかし、急速な生成AIの進化と広がりを受け、「生成AIを使わないことこそが最大の問題点」という考えが広がり始めています。
AIがつくり出す文章に誤りが混じる可能性は否定できませんが、しかし、その理由を根拠として生成AIの驚異的能力を封印してしまうのは、やはり企業の発展・社会の進歩を視野に入れると適切な判断とは言い難いでしょう。
生成AIとの共存で未来を切り拓く
現在、我が国は超高齢化社会に突入し、人手不足が深刻化する中、生成AIはまさに救世主ともいえる存在です。実際、総務省と経済産業省が2024年4月に発表した「AI事業者ガイドライン」では、生成AIの問題点を冷静に受け止めたうえで、生成AIとの共存を推奨しています。
完璧な生成AIは現時点では存在しませんが、その能力は日進月歩の勢いで伸びており、もはや生成AIの問題点ばかりを重視するわけにはいきません。今後の社会づくりで重要な視点は、「生成AIとの共存」一択といえるでしょう。
参照:総務省「生成AIが抱える課題」
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生成AIの問題点についてまとめ
生成AIは、ハルシネーション(誤情報の生成)や個人情報の流出、著作権侵害といった、無視できない問題点を抱えています。
しかし、その進化の早さは目を見張るものがあり、ほんの数ヶ月前には不可能だったことが、今や現実となっています。信憑性や信頼度も日々向上し、かつて問題点とされた領域は徐々に縮小しはじめました。
生成AIが社会に深く浸透していく中で、私たちは問題点を正しく理解しつつ、いかに能力を最大限に引き出すかに焦点を当てるべき時が来ているのです。