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【2025】NECの生成AI「cotomi」とは?料金・個人利用可否・サービス内容・活用事例を紹介

生成AIの話題が広がる中、NECが開発した生成AI「cotomi」にも注目が集まっています。しかし、NECが自社開発した生成AIは具体像が見えにくく、ネット上にも詳しい情報があまり多くありません。

そこで、本記事では、NECの生成AIの種類や料金、個人利用の可否までわかりやすくご紹介します。NECの生成AIの導入を検討している方はもちろん、「cotomi」について詳しく知りたい方もぜひご一読ください。

NECの生成AIとは?

NECの生成AIとは、NECが自社開発した生成AI「cotomi(コトミ)」のことです。

NECは、「cotomi」を基盤として、「MegaOak/iS(メガオーク アイエス)」や「Obbligato(オブリガート)」といった業種・業務特化型の生成AIソリューションを順次展開しています。

cotomi:日本語処理能力に優れ、業務や業界ごとにカスタマイズできる個別型LLM(大規模言語モデル)

NECが生成AIの開発に踏み出した背景

NECが生成AIの開発に着手した背景には、「デジタル敗戦」といわれてきた日本の過去があります。1990年代の日本市場では、ジャストシステムの「一太郎」が日本語処理ソフトウェアで圧倒的シェアを誇っていました。

しかし、Microsoftによる世界規模での市場展開が進むにつれて、ワープロソフトでは「Word」が席巻。Microsoftの「Office」がPCにプリインストールされる形で販売されるケースも増えはじめ、一太郎の優位性は薄れていきます。

その後もiPhoneやクラウド分野で海外勢に押され、日本は情報サービス国際収支でも赤字が拡大。こうした過去を踏まえ、NECは最先端技術である生成AIにいち早く着目し、独自の生成AI「cotomi」の開発を進めたのです。

なお、NECの生成AI事業責任者・千葉雄樹氏は、「性能勝負で力比べをする意図は持っていない」と述べ、顧客情報との連携により、個々の質問にも回答できるAI開発を進めています。

NECの生成AIの歴史

ここでは、NECの生成AIの歴史を年表形式でご紹介します。現在どのような生成AI関連製品があるのか知りたい方も、この歩みをたどることで全体像を把握できるでしょう。

年代できごと
1968年郵便自動仕分けシステムを世界に先駆けて開発(AI事業の源流)
1982年世界初の指紋認証システムを実用化
2023年7月NEC独自開発のLLMを基盤とした生成AI「cotomi」の提供開始
2023年12月生成AI「cotomi」の強化・拡充と生成AI事業戦略を発表
2024年3月生成AI搭載の電子カルテシステム「MegaOak/iS」の販売を開始
2024年4月「cotomi Pro」と「cotomi Light」を開発
2024年11月PLMソフトウェア「Obbligato(オブリガート)」に生成AI連携機能を搭載
2025年4月大塚商会との共同開発・オンプレミス型生成AI「美琴」の提供を開始

参照:NEC

NECが開発した「cotomi」のような大規模言語モデル(LLM)のAPIを利用すれば、自社の業務やデータに特化した形でカスタマイズされたチャットボットを構築できます。

生成AIセミナーでは、このAPIを使った自社独自ChatGPTの作成を行っています。業務効率アップに有効なプロンプト入力術、生成AIの適切な活用方法など幅広く学べる実践的な内容です。ぜひこの機会に生成AIの理解を深め、安心してビジネスに活用しましょう。

セミナー名生成AIセミナー
運営元ProSkilll(プロスキル)
価格(税込)27,500円〜
開催期間2日間
受講形式対面(東京・名古屋・大阪)・ライブウェビナー

NTTも2024年3月に自社開発の生成AI「tsuzumi」を発表しました。これらの国産LLMは、あえてコンパクトなモデルを採用しており、これが各社の競争優位性になると見られています。

NTTの「tsuzumi」に関する詳細は、以下の記事でご確認いただけます。

【2025】NTTの生成AI「tsuzumi」とは?特徴・料金プラン・導入事例まで徹底解説

生成AIの種類については、以下の記事で詳細に解説しています。文章や画像など、ジャンル別に分かりやすくまとめていますので、ぜひご覧ください。

【2025】生成AIの種類一覧とおすすめのツールも紹介

NECの生成AI「cotomi」とは?

NECの生成AI「cotomi」とは?

「cotomi(コトミ)」は、NECが開発した優れた日本語性能を持つ生成AIです。「cotomi」はNEC社員約4万人による社内検証を通じて磨かれ、理論性能だけでなく現場での実用性を重視して開発されました。

特に文書検索に活用されるRAG(検索拡張生成)機能では、標準設定でもGPT-3.5を上回る正答率を達成。カスタマイズ後はGPT-4超えの精度を、15分の1の速さで実現しています。

ちなみに、「cotomi」という名称には、「ことば」で明るい未来を切り拓き、お客様の「こと」が「実を結ぶ(みのる)」という願いが込められています。

「cotomi」のモデルは「cotomi Light」と「cotomi Pro」

NECは企業のさまざまなニーズに応えるため、2024年4月に性能の異なる「cotomi Light」と「cotomi Pro」の2モデルを開発しました。これらのモデルはグローバルに展開する生成AIと同等の性能を持ち、さらに、NEC独自の学習方法やアーキテクチャにより従来の生成AIより処理スピードが高まっています。

cotomi Light

  • 軽量かつ高性能
  • 大量リクエストの処理もスピーディに完了
  • GPT-3.5-Turbo相当の能力を保持
  • ファイチューニング後の処理速度は約15倍・正答率はGPT-以上

cotomi Pro

  • 高い文書処理能力(要約・質疑応答・論理推論など)
  • GPT-4の5倍を超えるの処理スピード
  • 性能面はGPT-4やClaude 2に匹敵
  • GPUを増やすことで応答時間をさらに迅速化

日本語処理に強い「cotomi」

ELYZA Tasks 100(人手評価)

「cotomi」は日本語に特化した独自の大規模辞書(トークナイザ)を搭載しており、日本語特有の文脈や表現に高精度で対応し、文書要約、推論、質疑応答といった日常業務において、特に日本語を多用する日本企業の現場で高い効果を発揮します。

上記画像「ELYZA Tasks 100」の指標では、「cotomi Light」と「cotomi Pro」のどちらも国内外の主要モデルを上回る実力を示しました。

cotomiはその技術力が高く評価され、MM総研大賞2024 スマートソリューション部門(日本語LLM分野)最優秀賞など、多数の受賞歴を誇ります。NECは今後もパートナー企業と連携し、安全性と実用性を両立したcotomiベースの生成AIを広く提供していく方針を示しています。

参照:NEC

「cotomi」は個人利用できる?

「cotomi」は現時点(2025年5月25日現在)で「cotomi」単体での一般提供(個人利用)、および価格公開は行われていません。「cotomi」は生成AIの基盤モデルとして、NECの生成AI活用ツール「MegaOak/iS」「Obbligato」などに組み込まれる形で提供されています。

NECの公式見解としては法人向けサービスとして展開されているので、個人利用を検討している方は、現時点ではこれらの法人向けソリューションの利用を検討するか、将来的な個人向けサービスの展開を待つ必要があるでしょう。

NECの生成AIの種類と料金

NECの生成AIの種類と料金

先ほどお伝えしたように、NECの生成AIは、独自に開発した「cotomi」を基盤として製品化しています。ここでは、NECの生成AIを活用した主要な製品をご紹介します。まずは、それぞれの製品の概要と料金について一覧で見てみましょう。

製品名概要料金(税抜)
MegaOak/iS業界初となる生成AI搭載の電子カルテ
  • 7,200万円~
  • オプション機能利用料:5万円~
Obbligato生成AI搭載のPLM(製品ライフサイクル管理)生成AI連携オプション:10万円/月~
美琴大塚商会と共同開発の生成AIソリューション要問合せ

参照:NECNEC「生成AI連携機能を搭載したObbligatoを提供開始」

①MegaOak/iS

「MegaOak/iS(メガオーク アイエス)」は、NECが開発した生成AI搭載の電子カルテシステムです。この電子カルテは、診療情報を「経過」「検査」「処方」などに分類し、時系列で整理したうえで、重要なキーワードを抽出し、そこから、クラウド上で適切な要約文を生成します。

「MegaOak/iS」が現時点でAIが対応しているのは、以下のような文書の下書き作成です。

  • 他の医療機関への紹介状(診療情報提供書)
  • 入院患者の退院時サマリー

実証実験では、従来の手作業と比べて平均47%の時間短縮を達成し、実際に使用した医師たちからは「文章の品質が高い」との声も多く寄せられました。今後は、NEC製以外の電子カルテを使っている医療機関でも利用可能になる予定です。

なお、開発・リリースを正式販売したのは2024年4月で、このプロジェクトは電子カルテに生成AIを活用した初の試みでした。

MegaOak/iSの主な機能一覧

カテゴリ主要機能例
利用者認証・患者選択利用者認証、患者検索、ベッドコントロール
診療記録・支援診療記録、サマライズノート、文書、ヒストリーマップ
オーダ入院申込、検体検査、処方、手術・麻酔、レジメン
看護看護プロフィール、患者状態、申し送り、看護計画、看護日誌
その他クリニカルパス、全文検索、チーム患者一覧
オプション地域連携、電子認証、医療機器連携

参照:MegaOak/iS

②Obbligato

「Obbligato(オブリガート)」は、NECと東レエンジニアリングが共同開発した、NECの生成AI搭載PLMソフトウェアです。このツールは、すでに東レエンジニアリングで導入している「Obbligato」に、大規模言語モデルを組み合わせることで、以下の機能を実現しています。

  • チャット形式で手軽に質問可能
  • 質問に対し、即座に正確な情報を提示
  • 必要な情報の検索や要約が一瞬で完了

これにより、「ベテラン技術者の専門的な知見を、現場の誰もが共有できる」ようになります。これは、製造業に共通する課題である「スキルの属人化」を解消し、今後の人口減少に伴う人材不足解消、業務効率アップに大きく貢献します。

なお、当プロジェクトは2024年6月に始まり、今後も両社での共創活動は継続される予定です。

Obbligatoの主な機能一覧

カテゴリ主な機能
部品/製品管理製品構成管理、部品表エディタ、製番管理、製品管理
ドキュメント/データドキュメント管理、コンテンツサーバ、3DCAD データ管理
プロジェクト/タスクプロジェクト管理、タスク管理、化学物質管理、化学物質収支管理
連携/外部連携プライヤ連携拡張オプション、外部システム連携オプション
設計変更/品質設計変更、オーダ管理、配付/アクティビティ管理
セキュリティセキュリティ機能拡張オプション

参照:NECObbligato

③美琴

「美琴(powered by cotomi)」は、大塚商会とNECが共同開発したオンプレミス型の生成AIソリューションです。本製品は、「生成AIをビジネスに活用したいけれど、セキュリティは絶対に妥協できない」そんな企業の声に応えるかたちで誕生しました。

このツールは、外部ネットワークにつながない閉域環境で、生成AIが利用できるため、企業の機密情報を外部に出すことなく、社内の安全なネットワークの中で生成AIを活用できます。その他、以下のような魅力もあります。

  • NECの生成AI「cotomi」の高精度な日本語処理性能と高速応答
  • シンプルで設置しやすい長方形のタワー型筐体
  • 大塚商会のノウハウを活かした業種別カスタマイズ
  • 大企業から中小企業まで幅広く対応

「美琴」は、2025年4月に提供が開始され、現在、300社への導入を目指すプロジェクトが進行中です。

「美琴」サーバーの主な項目

項目内容
モデルExpress5800 / T110k-M
CPU(8C / 1.80GHz / Bronze 3408U)x1(8C / 1.80GHz / Bronze 3408U)x1
GPUNVIDIA L4 x2
メモリ32GB増設メモリボードx4
OSRed Hat Enterprise Linux
ストレージSATA RI SSD 960GB×2、RAIDコントローラ
消費電力待機時:133W、高負荷時:553W
サイズ195mm x 580mm x 462mm
重量約24kg

参照:NEC大塚商会

NECの生成AI導入事例3選

NECの生成AI導入事例3選

最後に、NECの生成AIシステムを導入し、業務効率化や生産性向上といった成果を上げた企業事例を3つご紹介します。

導入企業・団体主な導入システム主な導入効果
橋本市民病院電子カルテ「MegaOak/iS」医療DX推進、操作性向上、院外連携強化
樫山工業株式会社PLM「Obbligato」+ERP連携リードタイム1週間以上短縮、生産性向上
北九州市「cotomi」ベースのシステム職員の会計事務問い合わせ対応の時間削減

①橋本市民病院

橋本市民病院では、NECが提供する生成AI搭載の電子カルテシステム「MegaOak/iS」を2024年2月に導入しました。同院は地域医療を担う中核病院であり、人口減少などの社会状況の変化を踏まえ、新築移転から18年間の活用していた電子カルテ運用を経て、この度本ツールの導入に踏み切っています。

導入当初、慣れた旧システムへの懐かしさの声もありましたが、若い世代や入力効率を重視するスタッフからは、機能の充実と直感的な操作性が高く評価されています。特に、クラウド基盤での運用や院外連携の強化など、将来的なポテンシャルに期待が寄せられています。

導入時の苦労を乗り越え、病院はNECと共にこの新システムを「新しい時代の医療DXにふさわしいシステム」へと育てていく意向です。

参照:NEC

②樫山工業株式会社

真空ポンプの世界的なメーカーである樫山工業株式会社では、全社でNECの生成AI搭載のPLM「Obbligato」とERP「IFS Applications」を連携させた基盤を構築しました。導入に至ったのは、主力商品であるドライ真空ポンプ(精密機器製造に使用)の世界的な需要増に伴う短納期・高効率生産への対応によるものです。

同社は、生産管理システムが分断され、属人的な管理やデータ活用の限界が課題でした。しかし、NECの生成AIシステムを主とした新基盤導入後は、オーバーホールを含むメンテナンス事業のリードタイムを1週間以上短縮することに成功。今後は、蓄積されたデータを活用し、需要予測に基づく先行生産やモジュール生産へと、さらなるものづくり革新を進めていく方針です。

参照:NEC

③北九州市

北九州市では、庁内業務の効率化と職員の働き方改革を推進するため、NEC開発の生成AI「cotomi」をベースに、北九州市の会計事務関連のデータを学習した「AI会計室」を構築しました。これまで、それぞれの課の会計事務職員が業務上の疑問点を解消するには、マニュアル参照や会計室への直接質問が主であり、これらによって滞る業務が課題でした。

そこで、北九州市の会計事務に関するデータをAIに学習させ、会計事務に関する質問に「AI会計室」が回答するシステムを構築。これにより、一般職員は迅速に疑問を解消でき、会計室職員は問い合わせ対応に費やす時間を削減し、双方の業務効率向上を目指しています。

参照:NEC

NECの生成AIシステムについて、導入事例をご覧になってさらに関心が高まった方も多いのではないでしょうか。生成AIセミナーは、APIを活用した生成AIツールの構築方法から、業務効率化につながるプロンプト活用術、実践的なAIの使い方まで幅広く学べます。

この機会に、プロの使い方や生成AIのリスクなど、幅広い視点で理解を深めてみてください。

NECの生成AIについてまとめ

NECが独自に開発した生成AI「cotomi」は、日本語に特化した高い精度と、処理の速さで注目を集めています。

主要な生成AIツール、たとえばChatGPTなどと比べても引けを取らない性能を持ち、「日本語AIの切り札」として期待されています。在、NECの生成AI「cotomi」は個人利用には対応していませんが、その注目度の高さから今後の進化と活用の広がりが期待できます。