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【2025】生成AIコンテンツ著作権侵害の判断基準!著作権の最新事情についても解説

生成AIが急速に進化する一方で、生成AIが作り出すコンテンツの著作権が関心を集めています。
AIやIT技術の発展を核とした第4次産業革命。そのイノベーションを促進するために、国の著作権に対する見解も徐々に変化してきました。

このような変化の中で、著作権の定義を正確に理解しきれていない方もいらっしゃるかも知れません。

そこでこの記事では、生成AIで作ったコンテンツの著作権について詳しく解説します。
著作権の最新事情や著作権侵害の判例についてもお伝えするので、生成AIの適切な使い方を知りたい方はぜひ参考にしてください。

生成AIコンテンツとは

生成AIコンテンツとは

生成AIコンテンツとは、生成AIが創作したコンテンツのことです。

生成AIといえばChatGPTが有名ですが、このような生成AIツールを使って作った画像やテキスト、音楽、動画、コードなどが該当します。

生成AIコンテンツの著作権の帰属先

生成AIコンテンツの著作権の帰属先は、人の関与の程度によって異なります

人の関与が少ない

一般的な考え方としては、人の関与が少ない、もしくはAIが自動生成したコンテンツに著作権は発生しないとされています。

たとえば、人がボタンをクリックしただけで生成したAIコンテンツに著作権は生じません。
つまり、人の意図や思想を表現しておらず、AIが自立的に生成したコンテンツに権利の帰属先はないということです。

人の関与が多い

一方、AIが生成したコンテンツに対して、人がイメージや意図を反映させて具体的な表現に関与した場合、その関与者が著作権の帰属先となります。

たとえば、詳細なプロンプトを入力し、独自のイメージを表現した生成したAI画像、人の修正部分が大きく、かつ創作性が認められるAIテキストなどが該当します。

人間が、自己表現の手段として生成AIを活用した場合は、生成者に著作権が生じると認識してもらうと良いでしょう。

参照:文化庁「AIと著作権

生成AIによる制作物を商用利用してよいのか

「生成AIによるコンテンツを商用利用して問題ないのか?」という声もよく耳にします。

生成AIの制作物は商用利用は可能ですが、その条件は著作権法の基準を厳密に準拠しなければいけません。具体的には、著作権法第23条の規定に基づき、正当な範囲内での利用に限られます。

(公衆送信権等)
第二十三条著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。

引用元:e-Gov 法令検索

生成AIによるコンテンツの商用利用は、原則として個人・法人に関わらず、当該コンテンツそのものが違法であるか否かによって利用の有無が決定します。

詳しくは、次項「生成AIコンテンツは著作権侵害になる?」をご参照ください。

生成AIコンテンツは著作権侵害になる?

生成AIコンテンツは著作権侵害になる?

生成AIで作成したコンテンツが著作権侵害に該当するか否かは、生成されたコンテンツの内容により判断されます。

著作権侵害に該当するAIコンテンツ

著作権侵害の訴えを提起するためには、AI生成物が、著作権所有者の独創的な表現を無断で利用していることを「類似性」「依拠性」により立証する必要があります。

「類似性」と「依拠性」は、著作権侵害の判断基準として用いられる重要な要素です。
これらの要素には、評価基準があり、これに基づいて著作物侵害の有無を判断します。

以下は、この2つの著作権侵害に該当する内容と具体例をまとめています。

要素内容具体例
類似性既存の創作物に高度に類似している
  • 有名なイラストを一目で連想するAIイラスト
  • 特定の作家の絵画スタイルを模倣したAI生成画
  • 創作的表現が一部共通、もしくは完全一致
依拠性特定創作物の特性を意図して取り入れている
  • 既存キャラクター名をプロンプトに入力したAI画像
  • 特定の小説のストーリーを基にしたAI生成文章
  • 学習データに特定の著作物を含めた生成AI
  • 著名な作品の無断利用

著作権侵害に該当しないAIコンテンツ

著作権侵害に当たるケースが分かっていても、その線引きは存外不明瞭です。
そこで以下では、著作権侵害に該当しないAIコンテンツを具体的に解説します。

特定の法定利用行為

生成AIコンテンツが、既存の著作物と類似性や依拠性を有する場合であっても、特定の法定利用行為に該当すれば著作権侵害とはなりません。

主な特定の法定利用行為は以下の通りです。

  • 私的な目的で複製する場合
  • 研究や批評のために利用する場合
  • 教育目的で複製する場合

アイデアレベルの類似性

生成AIが既存の著作物と「作風」や「アイデア」のレベルで類似している場合、著作権法上の類似性は認められません。これは、著作権法が保護するのは「表現」であり、「アイデア」そのものではないという原則に基づいています。

その他

著作者から利用許諾を得ている、もしくは引用表記をしている場合は、上記のケースでも著作権侵害には該当しません。また、既存の作品を風刺したコンテンツ、ユーモアを交えた形で利用するパロディも、一定の条件下で認められる場合があります。

生成AIコンテンツが著作権侵害に当たるかどうかは、既存の著作物との類似性と依拠性の有無を個別に判断する必要があります。生成AIを利用する際には、常に著作権者の権利を尊重し、必要に応じて権利者の許諾を得ることを心がけておきましょう。

参照:文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」

生成AIで著作権侵害したときのリスク

生成AIで著作権侵害したときのリスク

生成AIを活用した際に、上記の基準を超えて著作権を侵害したらどのようなリスクがあるのでしょうか?本項では具体的な罰則、著作権侵害の判例について解説します。

著作権侵害時の民事・刑事処罰について

著作権侵害が確認された場合、差止請求や不当利得返還請求、損害賠償請求などの民事責任を負う可能性があります。これらは、故意・過失に関わらず適用され、故意の場合は刑事処罰に該当するため十分注意しておきましょう。

詳しくは以下のようになります。

処罰内容具体例・その他
差止請求侵害行為の停止や予防措置を求めること
  • 違法なコンテンツの削除・配信停止
  • 今後の侵害行為の禁止
不当利益返還請求不当に得た利益を返還請求すること違法なコンテンツで得た利益の返還
損害賠償請求著作権侵害によって被った損害の賠償を請求すること逸失利益などさまざまな要素を考慮して算定
刑事罰
  • 10年以下の懲役または1000万円以下の罰金
  • 併科(法人は3億円以下の罰金)
著作権侵害罪は、原則として権利者による告訴が必要な「親告罪」

参照:文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」「AIと著作権」

生成AIでの著作権侵害の判例

では、具体的に著作権を侵害したらどうなるのでしょうか?
以下は、中国とアメリカでの著作権侵害の判例です。

中国での判例

広州インターネット法院は、2024年2月8日に画像生成AIに関する著作権侵害訴訟の判決をくだしました。この件の原告は、ウルトラマンの著作権を持つ会社から中国での権利を譲渡された企業です。

被告は、AI画像生成サービスを提供する会社で、裁判所は被告のサービスが原告の著作権を侵害したと認定。主な判断基準は、AI生成画像が原告の著作物と高度に類似していたためでした。

裁判では、被告が著作権侵害の責任主体であると判断し、被告に対し、侵害行為の停止と技術的対策の実施、および1万元(211,009円:2024年10月23日の為替)の損害賠償を命じています。

アメリカでの判例

アメリカ・ニューヨーク・タイムズは、OpenAIとMicrosoftに対して数十億ドルの損害賠償を求める訴訟を起こしました。訴訟の主な主張点は、ChatGPTによる同紙の記事の無断利用で、これにより、購読料収入と広告収入の機会が奪われていると指摘しました。

その他、 「ゲーム・オブ・スローンズ」の著者ジョージ・R・R・マーティン氏を含む作家グループも、OpenAIを著作権侵害で提訴しています。この訴訟の要点は、ChatGPTによる各作家の著作物データの無許可利用で、OpenAIは作家の権利を尊重していると反論しました。

アメリカでの訴訟は、AI技術の発展に伴う著作権問題の複雑さを浮き彫りにしており、今後の判決や和解の行方が注目されています。日本でも、今後こうした判例が出る可能性があることを認識しておきましょう。

生成AIコンテンツの著作権適用範囲の変化

生成AIコンテンツの著作権の変化

生成AIコンテンツの著作権は、時代の変化により適用範囲に変化が見られはじめました。

従来の著作権法の改正

近年、IoT、ビッグデータ、AIといった技術を活用した第4次産業革命が注目を集め、新たなイノベーション創出への期待が高まっています。

しかし、従来の著作権法は、具体的な要件が細かく定められており、従来の著作権法では、新しい技術を活用したサービスの創出に対応できなくなり、新技術に対応できる柔軟な著作権制度を求める声が強まってきました。

そこで、文化庁は新技術を活用した新たなサービスの創出を促進するため、「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方」を示しました。

改正の内容

改正の主な内容は以下の通りです。

項目説明関連法条文
通常権利者の利益を害さない行為類型著作物の思想や感情の享受を目的としない利用が対象
  • データマイニング
  • ソフトウェア開発
  • 第30条の4
  • 第47条の4
権利者に与える不利益が軽微な行為類型権利者に大きな損害を与えない軽微な利用が対象
  • 著作物の所在検索サービス
  • 情報分析サービス
第47条の5

引用元:文化庁「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方について」

柔軟な権利制限規定の意義

柔軟な権利制限規定により、AI開発や新しいサービスの開発が加速し、社会全体の活性化につながることが期待されます。その他、著作物がより幅広く利用されるようになり、新たなビジネスモデルが生まれるなど、新たな可能性がさらに広がっていくでしょう。

最新の生成AIと著作権に関する考え方

2024年3月15日、文化審議会著作権分科会法制度小委員会が「AIと著作権に関する考え方について」という文書を発表しました。

この文書は、生成AIと著作権に関する考え方を整理・周知することを目的としています。
主な内容と注意点は以下の通りです。

文書の性質と位置づけ

この文書は法的拘束力を持たず、委員会の現時点での考え方を示すものであり、現存の特定の生成AIや技術について確定的な法的評価を行うものではありません。今後の技術発展や判例の蓄積に応じて見直される可能性があります。

著作権法の基本原則と権利制限規定

著作物の利用には原則として権利者の許諾が必要ですが、文化的所産の公正な利用を促進するための権利制限規定が設けられています。

AIと著作権に関する主な権利規定は以下の通りです。

権利制限規定関連法条文
著作物に表現された思想、および感情の享受が目的ではない利用第30条の4
電子計算機による情報処理、およびその結果の提供に付随する軽微利用等第47条の5
私的使用のための複製、引用、教育機関における複製等、営利を目的としない上演等
  • 第30条
  • 第32条第1項
  • 法第35条
  • 第38条

引用元:「AIと著作権に関する考え方について」

既存の権利者保護を強化

「AIと著作権に関する考え方について」では、「権利制限規定」など既出の概念を整理した内容が主でした。

しかし、AIを意図的に誘導して類似コンテンツを生成する場合は許諾が必要、最新情報の加工や要約を行う際、一定の程度を超えると許諾が必要など、既存のコンテンツ権利者を保護する方向性が強まってきたことも示されていました。

たとえば、画像を提供して類似コンテンツを生成する場合などが該当します。

現在は「著作権侵害に該当しなくても、不法行為や人格権侵害になる可能性がある」ということを、改めて認識する時期に差し掛かっているといえるでしょう。

専門家の推奨と重要性

この文書は、AIに関わる人々や利用者にとって重要な情報源であり、専門家もこの文書が時宜を得たもので、AIに関わる人々が一読すべきだと推奨しています。

権利制限規定の要件を満たす場合も、規定を十分に理解・再確認して適切に運用することを心がけましょう。

生成AIと著作権について学習する方法

生成AIと著作権について学習する方法

このように、生成AIコンテンツの取り扱いは非常に複雑で、時代の推移とともに、その法的適用範囲も変化し続けています。

従来の認識だけでは対応できない領域ですが、取り扱いを誤ると著作権所有者から訴えられる、故意であった場合には刑事罰も科せられるなど、非常にリスクが高い行為でもあります。

専門家のサポートの重要性

生成AIの適切な取り扱いに関する議論が続き、このように状況が目まぐるしく変化する中、安全に生成AIを活用するためには、専門家のアドバイスとサポートが欠かせません

国でもAIと著作権に関するセミナーを随時開催し、さらに「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」など、「AIと著作権に関する考え方について」について分かりやすく認識できる文書を提供しています。

国のサポート体制の限界

しかし、国のセミナーの開催は非常に限定的で、また、生成AIと著作権に関連する公的文書は非常に難解です。また、独学でこれらの文書を参照した場合、間違った認識で利用してしまう可能性も否定できません。

そんなときには、適切な知識を学べるセミナーがおすすめです。
セミナーでは、生成AIの正しい取り扱い方法はもちろん、業務効率向上に役立つ効果的な活用法など幅広い知識を習得できます。

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生成AIのセミナーはその他にも数多く開催されています。
多くのセミナーをリサーチして比較検討したい方は、以下の記事をご参照ください。

生成AIコンテンツと著作権についてまとめ

生成AIコンテンツと著作権の判断は、「類似性」と「依拠性」によって違法性の線引きがされています。

生成AIコンテンツと著作権の関連性は一見簡単なようですが、その適用範囲や解釈は案外難しく、個別によってその評価の仕方も変化してきます。

生成AIコンテンツと著作権の見解も常に変化を続ける中、適切で安全に生成AIを活用するためにもプロの指導を受けられる生成AIセミナーをぜひご活用ください。