パソコンやタブレットなどを利用して、コンピューター上で製図を行うCAD。建築や土木などのさまざまな業界で活用されており、設計には欠かせないツールです。
本記事では、建築業界でのCADの活用事例や、建築設計で使いやすいソフトを紹介しています。用途に合った建築CADを選びたい方は、ぜひ参考にしてください。
CADとは
建築CADを紹介する前に、先にCADについて解説していきます。どのような機能が備わっているか気になる方は、ぜひご覧ください。
- 製図するためのソフト
- CADでできること
- 使用するメリット
製図するためのソフト
CADとは「Computer-Aided Design」の頭文字を取った言葉で、コンピュータを利用して製図やデザインを行うソフトのことです。建築をはじめ、機械設計や土木などの幅広い分野で使用されており、2次元図面や3次元モデルの作成を効率的に行えます。
コンピューター上で製図をすることで、紙とペンを使う従来の方法よりも、より正確かつ複雑な図面を効率よく作成でできるようになりました。また、設計変更が必要になった場合にも容易に修正できるため、製品開発へのスピード向上にもつながります。
CADソフトはさまざまな企業が開発していますが、なかでも建築設計向けのソフトを建築CADといいます。建築CADには、建築設計を効率よく行えるようなテンプレートが用意されているため、特に建築業界で重宝されています。
上記の動画では、CADについて初心者向けにわかりやすく解説されています。さらに理解を深めたい方は、ぜひご覧ください。
CADでできること
CADを使うと、コンピュータ上で物の形を作ったり、設計図を描いたりすることができます。例えば、線や形、円などをツールから選択して簡単に描画できるほか、作成した模型を回転させることも可能です。
また、部品同士の干渉やエラーをチェックできる機能が搭載されているソフトウェアもあるため、より正確な設計ができます。設計段階でエラーに気づけるため、完成してからのやり直しの工程を省略でき、時間も人的コストも削減できます。
なお、CADには平面的な図面を扱う2Dと、立体的なモデルを作成できる3Dがあります。2DCADと3DCADの違いについては、下記の記事で詳しく解説しているため、あわせてご覧ください。
CADを使うメリット
CADを使うメリットは、製図のしやすさだけではありません。CADを利用すると、データの管理や共有、保管などがスムーズにできる点がメリットです。
作成した図面やモデルはデジタルファイルとしてコンピューター上に保管されるため、紙の図面や設計資料を保管する物理的なスペースは必要ありません。オフィススペースや倉庫の使用が減るため、保管コストの削減につながります。
また、作図したデータはデジタル上で管理できるため、過去の図面や設計資料を探す時間が大幅に削減します。そのほか、電子メールやクラウド、ツールなどを使えば簡単に共有できるのもメリットです。
さらに設計チームや他部門、クライアントとの円滑な情報共有が可能になるため、プロジェクトの進行もスムーズです。このように、CADを活用することで保管や管理の観点からも、大きな利点が生まれます。
建築現場でのCAD活用方法
建築現場でのCADの活用方法は、多岐にわたります。もちろん、設計のためにCADで図面を作成するのも方法の一つですが、恩恵はそれだけではありません。
例えば、CADで図面を作成することでプロジェクトの精度が向上し、施工エラーのリスク軽減につながります。また、アニメーション機能を利用すると日の当たり方や風なども確認できるため、より良い設計が実現します。
おすすめの建築CAD7選
建築業界で働く方におすすめの、CADソフトを7つ紹介します。それぞれの特徴や機能をまとめているので、どのCADを利用するか悩んでいる方は、ぜひご覧ください。
- AutoCAD
- Jw_CAD
- Revit
- ArchiCAD
- SketchUp
- Vectorworks
- ARCHITREND ZERO
①AutoCAD
1つ目は、AutoCADです。Autodeskが開発している汎用CADソフトで、国内トップシェアを占めています。2Dと3Dでの図面作成が可能で、建築以外にも機械や土木工学など、幅広い分野で利用されています。
カスタマイズができるため使いやすく、プロジェクトの共有もスムーズにできる定番のソフトです。さまざまなオブジェクトが搭載されているのもポイントです。
またAutoCADの日常業務をより正確かつ効率化できる、AutoCAD自動化のスキル習得も需要が高まっているのはご存じでしょうか?自動化はスクリプトを用いた方法の他、「LISP」というプログラミング言語を用いて実現できます。これらのスキルを実践的な課題を通して2日間で学べる、以下のセミナーもあるのでぜひご覧ください。
②Jw_CAD
2つ目は、Jw_CADです。日本で作られたソフトウェアで、無料で利用できます。建築図面や機械図面など、製図に必要な基本的機能を備えており、低コストでCADを始めたいユーザーにおすすめです。
開発時に建築士が携わっているため、建築設計時に使いやすいと評判です。解説動画も多いため、使い方に悩んだときに参考にするとよいでしょう。
③Revit
3つ目は、Revitです。AutoCADと同様にAutodeskが販売しているソフトで、BIMに特化しています。BIMとは「ビルディングインフォメーションモデリング」の略称で、コンピューター上で作成した建物に建築をします。
同じデータを共有しながら、別々の設計者が作業や修正をできるシステムが備わっているため、効率よく設計に取り組めます。
④ArchiCAD
4つ目は、ArchiCADです。Graphisoft社が開発したBIMソフトウェアです。リアルタイムで変更と更新が可能なため、あらゆるフローを一元化できます。
壁や屋根、ドアなどのデータが組み込まれる機能が搭載されており、効率的な作業が可能です。直感的な操作ができるため、使いやすさもポイントの一つです。
⑤SketchUp
5つ目は、SketchUpです。Trimble Inc.社が開発している、2D・3Dモデリングが可能なソフトウェアです。ドラッグ&ドロップ式の操作で簡単に3Dモデルを作成できるため、初心者からプロまで利用されています。
無料版でも基本的な製図機能は備わっていますが、有料版のSketchUp ProにはVR機能が搭載されているなど、さらに高度な設計が可能です。クラウド上でデータが保存されるため、共有しやすいのも魅力です。
⑥Vectorworks
6つ目は、Vectorworksです。Vectorworks, Inc.が提供する高度なCADおよびBIMソフトウェアです。高いカスタマイズ性と柔軟性が特徴で、ユーザーのニーズに合わせて調整できます。
2Dと3Dモデル以外に、プレゼンテーション機能や表計算などの、さまざまなツールが備わっています。BIMにも対応しているため、プロセスを効率化します。
⑦ARCHITREND ZERO
7つ目は、ARCHITREND ZEROです。福井コンピュータアーキテクト社が自社開発を行っているソフトウェアです。特に、住宅設計に特化しており、直感的な操作で高品質な3Dモデルの作成が可能です。
コスト計算や数量積算などの建築に関する機能が豊富なため、設計から完成までをサポートします。また、プレゼンテーションツールも含まれているため、クライアントへより魅力的な提案ができます。
建築CADを使った仕事
建築CADを使用する仕事を、以下の3つ紹介します。将来CADを使った仕事がしたいと考える方は、チェックしておきましょう。
職種 | 特徴 |
---|---|
CADオペレーター | 未経験からでも挑戦しやすい |
設計士 | やや難易度が高い |
建築士 | 資格が必要 |
CADオペレーター
建築CADを使った仕事1つ目は、CADオペレーターです。CADオペレーターとは、設計者が作成した設計図の指示に従い、CADソフトを使って図面をデジタル化していきます。
図面の作成や修正を行うのが主な業務で、設計者がアイデアを具体化する上で欠かせない存在です。設計者やエンジニアと連携しながら、プロジェクトの進捗をサポートします。
専門知識とスキルが求められるものの、比較的未経験からでも挑戦しやすい職業です。建築関連のCADオペレーターの求人も多いため、確認してみてください。
なお、こちらの記事では、CADの図面作成方法を初心者向けにわかりやすく解説しています。あわせてご覧ください。
設計士
建築CADを使った仕事2つ目は、設計士です。設計士とは、クライアントの要望や建築基準に基づき、建物や製品の設計を行う仕事です。
計画段階から詳細設計までを担当し、さらには材料の選定や法規制の遵守など、設計に必要な全ての役割を果たします。そのため、CADの操作方法以外にも、建築学や法律に関する知識なども求められるため、難易度は高めです。
ただし、設計士になるために資格や経験は必要ありません。ハードルが高いと感じるかもしれませんが、未経験者でも募集している求人はあります。
建築士
建築CADを使った仕事3つ目は、建築士です。建築士もCADを用いて設計しますが、設計士と異なる点は国家資格の有無です。建築士として名乗るのは、以下のいずれかを取得した人です。
- 一級建築士
- 二級建築士
- 木造建築士
ただし、資格がなくても、建築事務所で業務に携わることは可能です。なぜなら、建築事務所には管理建築士が1人いれば構わないため、スタッフとして働くのは建築士の資格がなくても問題ないからです。
しかし、将来第一線で建築士として活躍したいと考える場合は、受験資格などを満たしてから、建築士の試験に挑戦してみるとよいでしょう。
建築CADのまとめ
本記事では、建築CADについて解説しました。CADとはコンピューター上で製図ができるソフトで、建築業界をはじめ、土木やアパレル業界などにも活用されています。
なかでも、建築設計に便利なツールや機能が搭載されているCADは、建築CADと呼ばれています。建築CADを利用すると、スムーズに設計できるため、業務の効率化が可能です。あなたに合ったソフトウェアを見つけて、建築CADを使いこなしましょう。