AWSが提供する生成AIサービスは、企業が抱える課題を解決し、新たなビジネス機会を生み出すための強力なツールです。しかし、AWSの生成AIサービスを導入することで、ビジネスシーンはどのように変革するのでしょうか?
本記事では、AWSが提供する生成AIサービスの全容について詳しく解説します。
ユースケースや実際に導入した企業の活用事例も紹介し、その具体的な成果と可能性を明らかにします。
AWSとは
AWSは、Amazon Web Service(アマゾンウェブサービス)の略称です。実に100以上のサービスを提供しており、NTTドコモやスシロー、任天堂Switch オンラインなど、私たちの身の回りのサービスの多くがAWSを活用して業務効率化を実現しています。
Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービス
AWSは、Amazonが提供している世界有数のクラウドコンピューティングサービスです。
WebサービスやITシステム構築に必要なサーバーやストレージなどのリソースをインターネットを通じて提供しています。
従来、これらのITインフラ(サーバーやストレージ)は自社で保有・管理する「オンプレミス」が主流でした。しかし、オンプレミスはサーバーの購入や運用・管理に手間がかかるというデメリットがありました。そのような中登場したのがAWSです。
AWSはAmazonの自社ITインフラ
AWSは、Amazonが自社のECサイトを運営するために構築した大規模なITインフラを基盤としています。しかし、Amazonはオンプレミスの課題点に着目したことをきっかけに、インターネットを通じて自社ITインフラを外部に提供するAWSサービスを開始したのです。
つまり、AWSはアマゾンの自社ITインフラを必要に応じて共有しているということになります。現在、多くの企業がオンプレミスからクラウドへ移行しており、AWSの他にもGoogle Cloud Platform(GCP)、Microsoft Azureなど、多様なクラウドサービスが競合しています。
AWSの生成AIサービスとは
AWSの生成AIサービスは、Amazon.comで培った機械学習のノウハウを活かし、企業が生成AIを簡単に活用できるよう設計されたツールです。
データを投入するだけで高度な分析や予測が可能で、深層学習技術を基盤にアプリケーションへの統合もスムーズに行えます。学習済みのモデルを利用するため、生成AIやAIの専門知識がなくても問題なく利用できます。
生成AIを使ったアプリ開発を実現
AWSの生成AIサービスを活用すれば、大規模言語モデル(LLM)や基盤モデル(FM)を用いて、あらゆる規模・業種の企業が、生成AIアプリケーションを構築できます。これは、お客様への対応や従業員の働き方を大きく変え、より良い体験をもたらすツールです。
AWSは、企業が安心して生成AIを使えるよう、厳重なセキュリティ対策を施し、世界最高レベルのモデルを提供しています。これにより、企業は自社のデータや目的に合わせて生成AIの高度な機能を簡単に活用でき、必要に応じてスケールを柔軟に調整できます。
AWSの生成AIサービスの効果を最大限に引き出すためには、生成AIの適切な使い方や著作権など、生成AIならではの特徴や注意点を学ぶことが重要です。
ProSkilllの生成AIセミナーでは、生成AIを使った効果的な活用術やリスクについて詳しく学びます。AWSの生成AIサービスの利用を検討している方に最適な学習サービスです。
受講期間 | 2日 |
受講形式 |
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受講料金 | 各38,500円 |
生成AIの著作権侵害の判断基準については以下の記事で詳しく解説しています。
著作権侵害で多額の賠償を命じられた実際の判例も紹介しているので、ぜひご一読いただきAWSの生成AIサービスをより効果的に活用するための知識を深めてください。
AWSの生成AIサービスの種類
AWSは、企業の多様なニーズに応える複数の生成AIサービスを提供しています。
以下の表は、AWSの生成AIサービスとその特徴をまとめたものです。
サービス名 | 主な機能 |
Amazon Q | カスタマイズ可能な生成AIアシスタント |
Amazon Bedrock | 様々なLLMとFMを簡単に利用可能 |
Amazon SageMaker | カスタム基盤モデルの構築とデプロイ |
AWS App Studio | エンタープライズグレードのアプリケーション構築 |
AIインフラストラクチャ | AI特化型のインフラで推論のトレーニングと実行 |
データ基盤 | AI活用のためのデータ基盤構築 |
参照:AWS
AWSの生成AIサービスは、Amazon Qのようなパーソナルアシスタントから、Amazon Bedrockのような多様な基盤モデルへのアクセス、さらにはAmazon SageMakerによるカスタムモデルの構築まで、幅広い生成AIサービスを提供しています。
AWSの生成AIサービスで注目のAmazon Bedrock
AWSの生成AIサービスで特に注目されているのはAmazon Bedrockです。
Amazon Bedrockは、AWS(アマゾンウェブサービス)が提供する最先端の生成AIサービスで、企業のAIアプリケーション開発を革新的に支援するプラットフォームです。2023年9月にサービスを開始し、急速に注目を集めています。
Amazon Bedrockの主な提供モデル
Amazon Bedrockは、主に以下のようなモデルを提供しています。
提供モデル | 主な特徴 |
Anthropic |
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AI21 Labs |
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Amazon |
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Cohere |
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Meta |
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Amazon Bedrockの特徴・メリット
Amazon Bedrockの特徴は、単一のAPIを通じて世界中の大手AI企業の高性能な基盤モデル(Foundation Model)にアクセスできることです。主な提供元には、AI21 Labs、Anthropic、Cohere、Meta、Mistral AI、Stability AI、そしてAmazon自身が含まれます。
導入することで、以下のようなメリットが得られます。
- 迅速なAIアプリケーション開発
- インフラ管理不要のサーバーレスサービスの実現
- 最小限のコード変更で最新モデルにアップグレード
- セキュリティとプライバシーへの対応
このように、Amazon Bedrockは、多様な基盤モデルへのアクセス、AWSとの連携、そして高いセキュリティ性を備えており、企業ニーズに適した最適な生成AIソリューションを提供しています。
AWSの生成AIサービスのユースケース
以下では、AWSの生成AIサービスのユースケースをご紹介しましょう。
ユースケース | 概要 |
チャットボットと仮想アシスタント | 生成AIによる問い合わせ顧客の自動化による顧客満足度・業務効率向上 |
顧客の声を分析 | 生成AIを使って顧客の声を分析して業務改善を実施 |
サービスのパーソラナイズ化 | 生成AIで個々のユーザーに適したサービス・広告を提供 |
①チャットボットと仮想アシスタント
AWSの生成AIサービスは、顧客の問い合わせ対応を自動化するチャットボットと仮想アシスタントを提供しています。これにより以下のようなメリットがあります。
- 顧客の質問に対して正確かつ迅速に応答
- カスタマーサポートの業務効率の大幅な改善
- 自然で洗練された会話体験の提供
- サポートにかかるコスト削減
これらのメリットにより、顧客満足度を高めるとともにコスト効率もアップできるため、企業の収益向上に貢献します。
②顧客の声を分析
AWSの生成AIサービスは、顧客の声を高度に分析できます。
これにより、以下のような分析が実現します。
- 顧客の感情や真の意図の正確な理解
- サポート担当者のパフォーマンスの詳細な分析
- 頻繁に寄せられる質問を基にした自動応答システムの最適化
このように、生成AIを使うことでサービス改善や顧客満足度の向上につなげることができます。
③サービスのパーソナライズ化
AWSの生成AIサービスは、パーソナライズされたサービス提供を実現します。購入履歴、閲覧履歴、その他の膨大なデータを分析し、一人ひとりに最適化された情報・商品の提案が可能です。具体例を以下に挙げてみましょう。
- ユーザーの興味や行動パターンに基づいた記事や広告表示
- 個々の状況や希望に合わせたプランの提案
このように、顧客一人ひとりに合わせた、よりきめ細かいサービス体験を提供できます。
AWSの生成AIサービスの活用事例
続いて、AWSの生成AIサービスの活用事例をご紹介します。
企業名 | 導入した生成AIサービス | 効果 |
合同会社DMM.com | Amazon Bedrock |
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株式会社メタバーズ | Amazon Bedrock |
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カシオ計算機 | Amazon Bedrock |
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株式会社オズビジョン |
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①合同会社DMM.com
オンラインプラットフォームである合同会社DMM.comは、毎日1,000件以上のユーザーレビューに直面しており、そのうち1割以上が規約違反の内容を含んでいました。
これらのレビューには、誹謗中傷、スパム、違法コンテンツ、プライバシー侵害など、多岐にわたる問題が存在しており、これまでキーワードマッチングなどを使い効率化を試みましたが、言語解析能力の限界により効果的なレビュー承認は困難でした。
そこでDMM.comは、Amazon Bedrockを活用した革新的な「レビュー承認システム」を開発しました。Claude 3.5 Sonnetの高度な言語理解能力を利用することで、以下のような成果を達成しています。
- 人間に匹敵する98%以上の判定精度を実現
- 大量のレビューを短時間で一貫性をもって処理
- AIの客観的な判断により見落とされていた内容も検出
コスト面でも、1日あたり約20ドルと、非常に効率的な運用を実現しています。
将来的には、コンテンツモデレーションの完全自動化を目指しています。
②株式会社メタバーズ
株式会社メタバーズは、AWS生成AIサービスを活用し、メタバース空間「メタバース® CYZY SPACE」のAIチャットボット・アバターボットによる革新的な顧客対応を実現しました。
従来、メタバース空間での顧客対応は、人材コストがかかるという課題がありましたが、Amazon Bedrockの導入により、以下の効果を実現しました。
- 顧客のニーズに合わせた最適なAIモデルの選択
- 新規モデルの開発期間の大幅な短縮
- モデル開発コストの90%削減
これらの成果により、メタバース空間上のAIボットは、より自然で多様な対応が可能となり、顧客満足度の向上に貢献しています。
③カシオ計算機
カシオ計算機は、AWSの生成AIサービス・Amazon Bedrockを導入し、社員向けのAIチャットボットを構築しました。このチャットボットは、コーディング、文書作成、情報検索など、さまざまな業務をサポートし、社員の生産性向上に大きく貢献しています。
具体的には、以下の効果が得られました。
- コード作成からブレインストーミングまで、幅広い業務をサポート
- Claude 3.5 Sonnetなどの高度な言語モデルにより、高品質な回答を提供
- コーディングにおいて、大幅な時間短縮を実現
現在、1,600名以上の社員が登録しており、活発に利用されています。
このように、カシオ計算機は、生成AIを導入することで、社員の業務効率化を図り、企業全体の競争力強化につなげました。
④株式会社オズビジョン
国内最大級のポイントモール「ハピタス」を運営する株式会社オズビジョンは、ユーザーの検索意図を正確に捉え、より関連性の高い広告を表示するため、AWSの生成AIサービス・Amazon BedrockとAmazon Auroraを活用したセマンティックサーチ機能を導入しました。
従来のハピタスの検索機能では、ユーザーが「ワイン」と検索した場合、意図しない「ワインダー」といった広告が表示されるなど、検索結果とユーザーの期待値に大きな乖離がありました。導入後の改善点は以下の通りです。
- 検索ワードの意味を深く理解し、文脈に合わせた検索結果を表示
- 似た意味を持つ検索ワードに対して、より適切な結果を表示
- 単語間の関係性も考慮した高度なマッチングを実現
生成AIサービス導入後、まだ期待通りの成果には至っていませんが、継続的な改善に取り組んでいます。現在は、ユーザーのフィードバックを参考に、検索アルゴリズムをチューニングし、より精度の高い検索結果を提供することを目指しています。
このように、AWSの生成AIサービスをはじめ、生成AIの高度な機能を活用する企業は急速に増加してきました。しかし、生成AIはハルシネーションや著作権など、利用にあたっていくつも注意すべきポイントがあります。
そこで、行政をはじめ多くの企業は、生成AIガイドラインを策定し、適切な使い方を指南しています。以下の記事では、生成AIガイドラインの作り方、および実際に事例を紹介していますので、ぜひ生成AIが企業でどのように活用されているのかご確認ください。
AWSの生成AIサービスについてまとめ
AWSの生成AIサービスはAmazon Bedrockをはじめ、Amazon SageMaker、Amazon Q多岐にわたるサービスを提供しており、自然言語処理、画像生成、コード生成など、多彩なタスクに対応できます。
企業は、AWSの生成AIサービスから自社の課題や目的に合わせて最適なプランを選択できるため、無駄なく効率的に業務改善を図れます。
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