クリエイティブなコンテンツ作成と業務効率化で生成AIが注目されています。とくに近年は機能のブラッシュアップが進み、ビジネスに応用できないか検討している方も多いですよね。しかし効果的な使い方が分からず、導入を渋る企業は少なくありません。
そこで本記事では生成AIの使い方と注意点について解説します。
生成AIとは?
生成AIとは、膨大な学習データを元にテキストや画像、動画など多様なコンテンツを生み出すAIのことです。代表的な例としてはOpenAIが開発したChatGPTが記憶に新しいでしょう。
質問を入力すると、人とチャットをしているような自然な文章で返してくれることで人気を集め、公開からわずか2か月で1億人を突破しました。その後もプログラム改修を経て動画やプログラミングコードの生成など、あらゆるコンテンツ生成の応用を実現しています。
専門性がなくてもハイクオリティな成果物を作れるため、企業活動に応用する企業が増えています。
生成AIの主な活用方法
生成AIはさまざまなコンテンツを制作できるため、応用できる幅も広がりつつあります。生成AIの主な活用方法は下の4つです。
- 調査・分析
- メール・企画書作成
- プログラミング
- 動画・画像制作
①調査・分析
生成AIは大量のデータ収集・処理に長けているため、リサーチとその結果をまとめることに適しています。ChatGPTを例に挙げると、出典と出力形式(表や箇条書きなど)を指示すれば、その通りに結果を示してくれます。
定量評価もチャットでやり取りするように指示できるため、データを効率良くリサーチできるでしょう。企画の立案・フィードバックも合わせて指示すれば、正確な情報を元に画期的な案を示してくれるはずです。
②メール・企画書作成
メールや企画書の原案作成も生成AIの得意とするところです。
企画書であれば背景と目的、必要な成果を指示すれば、大量のアイディアを出すことができます。メールの作成においても、送信者の個人情報や過去の履歴、興味関心を元に、親しみのある文面を効率良く書けるでしょう。
また、議事録のように情報のまとめ作業にも適しています。音声を生成AIに読み込ませ、会議の要約や登場人物に応じたインタビュー形式の記事化など、用途に応じて瞬時にまとめることができます。
このように、ユーザーニーズに応じた文書作成が可能なのも生成AIの強みです。
③プログラミング
生成AIは大量のソースコードを学習できるため、プログラミンやシステム設計にも応用することができます。
従来は人間が詳細設計書に基づいて適切なコードを入力していましたが、生成AIに設計を指示することで適したコードを瞬時に生成できます。指示するときにも「左上のボタンをタップしたら、画面に警告を表示する」といったように人の言葉を入力すれば、それに応じたコードを出力します。
そのため、プログラミングに明るくなくてもソフトウェアを開発できるでしょう。
④動画・画像制作
動画や画像などのコンテンツ制作も、生成AIによって目覚ましく発展しています。
コンテンツの品質と生成速度に注目し、近年ではアニメの制作現場やプロモーション動画の制作でも導入する企業が増加。中にはベースとなる動画とプロンプトを組み合わせて、数週間かかっていたアニメシーン制作を十数分で完了させた事例もあります。
生成AIは動画・画像制作の現場において、人手不足の解消、業務の効率化、クリエイティビティの促進などあらゆる側面で重宝されています。
生成AIを活用する4つのステップとコツ
生成AIを使いこなすためには、プロンプトと呼ばれる指示文の精度がカギを握ります。ここでは生成AIを活用する4つのステップを紹介します。
- 詳細に指示を与える
- 役割を具体化する
- 役割を具体化する
- 指示を修正する
各ステップで期待値を上回るコツも紹介します。
ステップ1:詳細に指示を与える
生成AIに何をしてほしいのか指示を具体化することが大切です。
たとえば「おすすめの和食を教えてほしい」と伝えると寿司や天ぷら、うどんがおすすめなど、ありきたりな回答しか提示しません。ここで「京都で子どもにおすすめの和食を知りたい」と詳細化すれば、具体的な店名や子ども向けのメニューとおすすめの理由まで教えてくれるかもしれません。
より詳しい指示を与えることで、欲しい情報を入手しやすくなります。
効率良く期待値を得るためのコツ
欲する情報を得たいなら目的を明確にしましょう。
おすすめのグルメ一つとっても、それらを食べる理由や好み、食事のタイミング(朝食、ティータイムなど)など利用者によって適したメニューは変わります。ピンポイントに欲しい情報を得るためには、背景を詳細に詰めることが重要です。
ステップ2:役割を具体化する
同じ情報や成果物を得たいとしても、ユーザーの視点が変わると必要なコンテンツも変わります。
おすすめの転職エージェントの探し方を知りたいとした場合、ユーザーが求職者視点なのか人材を探している企業なのかでアプローチが変わるでしょう。
「あなたは転職中のインフラエンジニアです」「セキュリティエンジニアを募集しているECサイトの運営会社です」といったように役割を与えると、ユーザーニーズに近い情報を提示してくれます。
効率良く期待値を得るためのコツ
ペルソナを設定することで正確な役割を与えることができます。ペルソナとは商品やサービスを利用するユーザー像のことで、年齢や職業、家族構成、悩み、趣味嗜好などからサービスの利用者を具体化します。
下の表は、転職活動をしているペルソナの例をまとめたもので、ペルソナの精度が高いと要望に沿ったアウトプットを期待できます。
性別 | 男性 |
居住地 | 滋賀県大津市 |
家族構成 | 妻、小学生の子ども1人と同居(分譲マンション) |
経歴 | ○○大学院・コンピューター学研究科卒業。○×テクノロジー入社後、ECサイトの構築・運用に従事。在職中に応用情報技術者を取得し入社8年目でプロジェクトリーダーに昇格。 現在入社10年目で年収は800万円 |
転職の理由 | ○×テクノロジー入社の取引先はニッチな業界が多く、汎用性の高いスキルが得られにくい。 また会社の賃金テーブルでは大きな収入増も見込めない。2人目の出産とマイホームの購入も踏まえると今の会社にいるのは得策ではない。より良い待遇とキャリアアップの機会が欲しくて転職を検討している。 |
休日・アフター5の過ごし方 | 釣り、麻雀、子どもと遊ぶ、資格の勉強など |
ステップ3:条件をまとめる
アウトプットに制約を課すことで、必要な形式で欲しい情報を入手することができます。システム開発の予算取りをする資料作成を例に挙げると、以下のように条件を設けると良いかもしれません。
- 文字数は2,000字以内
- 他社の導入事例を紹介
- コストの比較表を提示
- 一部の専門用語を使用しない
条件を詰めることで意図に沿ったアウトプット得られるでしょう。
効率良く期待値を得るためのコツ
条件面から期待するコンテンツを得るためには、コンテンツの利用目的を明確にすることです。
前述のシステム開発の予算取りで言えば、経営層を説得するための材料(他社事例、コストパフォーマンスなど)が条件に当てはまります。また、転職活動の履歴書を作成するなら、自分のアピールポイント(職歴、スキルセットなど)を盛り込むことを指示しなければいけません。
このように、目的から逆算すると適切にプロンプトの条件を定められます。
ステップ4:指示を修正する
残念ながら一回の指示で理想のコンテンツを生成するのは難しいです。出てきたコンテンツを見て何回もプロンプトを見直すことで、理想のコンテンツに近づけることができます。
たとえば商品の紹介でスペックの説明しか提示されなかったとしたら、ペルソナの設定が甘いのかもしれません。情報が網羅されていても読みにくいのであれば「図解・表の作成を追加指示する」といった判断もできます。
地道な修正を怠らないようにしましょう。
効率良く期待値を得るためのコツ
なるべく修正指示を少なくするなら、特定のジャンルに絞ってデータを学習させましょう。AIはデータを深層学習することで回答の精度を高められるからです。
システム開発の設計書を作るなら、過去の資料や運用計画書、プログラムコードなどを読み込前ましょう。マニュアル作成であれば、機械のスペックや操作場面の写真、ユースケースをインプットすることで、理解が深まるコンテンツを作成できます。
生成AI導入での成功事例4選
ここでは生成AI導入での成功事例を4つ紹介します。
- 販促メールの制作期間を1か月から1週間に削減
- 複数のデザイン案の生成で設計を効率化
- 稟議資料の自動生成に成功
- CM用パッケージ作成に生成AIを導入
導入の背景も分かるので、自社での活用シーンも想像しやすくなるでしょう。
①販促メールの作成を1か月から1週間
セブン&アイホールディングスでは販売促進に生成AIを導入し、販促メール制作の省力化に成功しました。
これまで販促メールは委託先に依頼していましたが、生成AIとRPA(人が行っていた作業をプログラムで自動化)により販促メールの制作を1か月から1週間に短縮しました。内製化で年間で約1万時間の削減が見込めるとのことです。
生成AIに業務プロセスの一部を任せることで、生産性の向上を実現した好例と言えます。
②複数のデザイン案の生成で設計を効率化
国内外で建設業を展開する大林組が建物の設計に生成AIを導入し、設計提案の効率化・多様化を実現しました。
従来の設計提案では、アイデア作りやCADによるデザイン案の作成など人手に依存することが多く、準備の負担が大きかったとのことです。
そこで、顧客の要望の具体化と合意形成の効率化を目指すべく、独自の生成AI「AiCorb」を開発。建物の概要データを読み込ませるだけで、建物の外観デザインを瞬時に複数生成することに成功しました。
顧客への提案で生成AIを活用し、顧客満足度向上に寄与した事例と言えます。
③生成AIによる広告制作でクリエイティブを追求
エンタテインメント事業に強みを持つパルコがファッション広告制作に生成AIを利用し、独自のポジションを確立しました。
広告制作でモデルは起用せず、人物、背景、ムービー、ナレーション、音楽などすべてのコンテンツにおいて生成AIを駆使ししました。生成AI1本で勝負しながらも高いクリエイティビティが評価され、デジタルメディア協会の「デジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー’23」で優秀賞を受賞。
人とAIのコラボレーションにより企業の独創性が高く評価された事例です。
④CM用パッケージ作成に生成AIを導入
飲料事業を展開する伊藤園では、CM用パッケージ作成に画像生成AIを導入し、多角的なアイデアの創出を実現しました。
生成AIによるモデルを元にデザイナーが修正をかけ、商品パッケージにブラッシュアップしました。生成された案もバラエティに富み、デザイン初期から具体度を高めることが可能です。そのため、方向性の食い違い防止や意思決定までのプロセス短縮も期待できます。
生成AIによって多角的なデザイン生成と開発工程の短縮を可能にした事例と言えます。
生成AIを使う際の注意点3つ
生成AIの性能は年々高まっていますが、決して万能ツールというわけではありません。生成AIを使う際の主な注意点は下の3つです。
- 著作権に配慮する
- 事実確認を徹底する
- 情報漏えいに注意する
①著作権に配慮する
コンテンツを商用利用する際には著作権に注意しましょう。生成AIはネットワーク上の膨大なデータを学習しているため、プロンプト次第では他のコンテンツと酷似する可能性があります。過去には生成AIによる記事の無断利用や著作物の侵害で、数十億ドルの損害賠償に発展した事例もあります。
また、生成AIにより自社の権利が侵害されるリスクも考慮しなけれないけません。企業競争に関わる情報は安易に公開しないことが賢明と言えます。
②事実確認を徹底する
得られたコンテンツが事実に基づいて生成されたのかチェックすることも重要です。とくに文章コンテンツは誤りのリスクが高く、アルゴリズムの精度や学習データのクオリティに大きく左右されます。
一般的には有料かつ最新版の生成AIは正確性が高いとされていますが、人の目でも事実確認は徹底しましょう。スムーズにリサーチするためにAIへ出典を指示するのも有効です。
③情報漏えいに注意する
学習データに個人情報や企業秘密が含まれいると、意図せず情報を流出させる可能性があります。韓国の大手半導体メーカーでは、社員が機密性の高いプログラムコードを生成AIに読み込ませ、機密情報を流出させたと発表しています。
一度生成AIに情報を読み込ませると、運営側のデータを削除させるの簡単ではありません。生成AIの使用ルールを定め、安全に活用することが重要です。
生成AIの使い方のまとめ
本記事では生成AIの使い方と期待値を得るためのコツ、活用事例、注意点などについて解説しました。
生成AIは作業の効率化や独創性の高いコンテンツを生み出せる点などから、多くの企業が導入を進めています。一方で、効果的に使えるか不安な企業が多いのも事実です。使い方に悩んだ際には、ぜひ本記事を参考にしてください。
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